新型コロナ・オミクロン株の拡大で実施されていたまん延防止等重点措置が最後の18都道府県でも解除された。今後はまさにウィズコロナの中で経済活動が行われることになる。ゴールデンウィークに向けてこれからが春本番。本格的な行楽シーズンに突入する。春商戦のラストスパート、夏商戦のスタートダッシュを決めたいものだ。

増えた東京の人出高齢者も多く

 東京のオミクロン株の新規感染者数は2月2日の2万1122人をピークに、3月17日時点で8461人と減少傾向が続いている。新宿、渋谷、銀座といった東京の繁華街を見ると、日中の人出は多く、マスク着用と手指消毒、ソーシャルディスタンスを確保しながら買い物などを楽しんでいる。百貨店などでは高齢者の姿も多く見られるようになった。一人ひとりがコロナ対策を講じることでウィズコロナの行動パターンが定着してきたようだ。

 まん延防止等重点措置の解除は、高齢者が先行したワクチンの3回目接種が進み、また重症化リスクが少ないと言われていることもあり、より経済を活性化させたいというのが政府の狙いだ。春の行楽シーズンに向けて、観光地や交通などを支援する目的もある。ゴールデンウィーク明けにもGoToトラベルが再開されるという情報もあり、梅雨入りまでは人々の移動がもっと活発化していくだろう。

春物一気に動く

価格上昇懸念も

 横山町問屋街各社は春夏物が活発化する実需期に向けて婦人衣料をはじめとしてバッグや帽子、服飾雑貨など品揃えを充実させている。3月半ばに気温が一気に上昇した翌日は、春物を仕入れる多くの専門店の姿があった。横山町でミセス向け衣料を仕入れたある専門店は「気温が上がると店頭を訪れるお客様は敏感に反応する。新しい商品を探しに来た」と、商品を車に積み込んでいた。「気温に左右されるが、3月入って一気に春物が動いた」と話す。

 一方で卸を悩ませているのが仕入れ価格の上昇の問題だ。本紙でも再三取り上げてきたが、中国や韓国からの商品は価格が20〜30%上がったものもある。原材料費の値上がりに加えて原油価格の高騰などが大きく影響している。ある問屋は「毎年、お客様に提供している定番品が値上がりしている。値上げせずに提供したいが、それも難しくなってくるかもしれない」と、頭を悩ませている。この間の円安傾向もそれに拍車をかけている。ロシアのウクライナ侵攻も懸念される。今後、原油や天然ガスの価格が上昇すれば、メーカーは商品価格にそれを転嫁する。価格の上昇は仕入れる専門店にとっても打撃だ。食品など物価が上がり始めており、インフレへの警戒感も強まっている。店頭での価格設定など難しい課題に直面している。

デジタルで商品見て

電話で注文も可能

 そうした中で問屋各社が力を入れているのがデジタルを使った情報発信だ。LINEや自社ホームページ、オンラインストアを通じて商品情報を直接、取引先の専門店に届けるもので、問屋のリアルタイムの情報を届けることができる。多くが新型コロナの流行当初から来街できない専門店をサポートする目的でスタートしたが、長引くコロナ禍にあって、得意先と密なコミュニケーションを取る重要なツールとなった。特にLINEは問屋と専門店オーナーが1対1でつながることに大きなメリットがある。

 問屋は新入荷の商品情報を写真と共にLINEで送る。それを見た専門店がLINEでメッセージを返したり、電話で直接担当者と話して商品の詳細を聞き、時には実際に発注したりもする。値引きなどのクーポンを発行する問屋もある。

 今年に入って初めてLINEにトライしたという高齢の専門店オーナーは「問屋の担当者に教えてもらいながら使えるようになった。送られてきた写真を見て、電話で注文する。東京に来なくても同じように仕入れができるので便利」と話してくれた。スマホを持ってはいたものの使うのは電話だけだったそうだ。また、別のオーナーは「お客様に友達登録をしてもらって、仕入れた商品を送る。来店促進にも活用している」と、店舗への集客や販売にも活用している。

 「実際に素材に触れて、色柄を判断して仕入れたい」というのは当然だが、コロナ禍での緊急避難的にLINEなどのデジタルを使えば、新しい商売の仕方や新規客との出会いも生まれてくる。

 横山町問屋新聞3月号では横山町奉仕会の問屋各社に簡単にアクセスできるQRコードの一覧を掲載した。スマホを使って実際に読み込んでみると、思っていた以上に易しい。ぜひ、トライしてもらいたいものだ