〜「巳年」は成長・変革の年、課題解決で売り上げ安定へ〜
コロナが5類感染症に分類されて1年半余り。問屋と小売店を取り巻く環境は大きく変わってきた。日々店頭で商品を販売する小売店はこれまでの常識が通用しなくなったと感じることも多いだろう。この間、学習したことを生かして売り上げを安定させ、これまで育ててきた「愛すべき私の店」を次の時代にもつないでいきたいものだ。
適量・適時販売
コロナ以降、問屋を悩ませてきたのが生産量の絞り込みだ。メーカーは在庫を恐れて生産量を絞り込み、売れ筋商品であっても追加が難しい。
繊研新聞によると、23年の衣服の供給量は35億5151万枚で前年の4・7%減だった。新型コロナが猛威を振るった20年、店舗の営業停止や外出制限などによって服の消費は低迷し、メーカー各社は行き場のない在庫を抱えるようになった。以降、メーカーは在庫のリスクを回避するために生産量を絞り込むようになった。この傾向は今年も続きそうだ。
一方で、商売に大きな影響を与えるのが天候だ。横山町の問屋各社からは「秋物が飛んだ」や「寒くなるのが遅すぎる。冬物の実需期がずれ込んだ」などの声が聞かれた。小売店も気温の変化に振り回されたことだろう。適正な量をいかに適時販売につなげていくか。セールで売り切るやり方は難しいだろう。
そこを乗り切る一つのやり方が問屋との深いコミュニケーションだ。大手の宮入や丸太屋は年初から春物の展示会を開催する。アクロスは初春物に切り替わる。問屋はすでに次のシーズンに取り組んでいる。昨年の店頭の状況を思い出し、早い段階で春物の商品を見て、仕入れ計画を検討することが必要だ。
顧客の若返りを図る
団塊の世代が75歳を迎える。高齢者人口が約3500万人を超えて、雇用や医療などさまざまな分野に影響が及ぶ「2025年問題」といわれる。高齢化は長くいわれている日本の課題だが、同時に少子化も進むことで労働人口も減少する。人手不足は深刻度を増しており、「人手不足倒産」なども増えている。
高齢者人口の増加は商売にも影響する。小売店の中にはシルバー層が顧客の中心という店も多い。高齢化率は年々上昇していく。特に地方ではその比率が高い。年金に頼る生活では衣料の購入を思いとどまることもある。
もし、顧客層の中心が70代ならばその下の層、50〜60代をターゲットにしていく。顧客になってくれればこの先10年間は店舗を訪れてくるだろう。そのためには仕入れる商品のテイストを変える必要がある。今の60代はバブルを経験し、デザイナーブランドを着こなしていた。問屋はさまざまなタイプの店が取引相手だ。50〜60代への提案で成功している店の情報も持っている。「うちの店にはちょっと若い」という考え方を取り払い、問屋の情報から商品のテイストを見直すことも一つのやり方だ。
事業承継を本気で
どのように店舗を継続していくか。多くの専門店が持つ悩みだ。横山町問屋新聞の読者である専門店の廃業が少しずつだが増えており、購読停止の理由はその大半が「店を閉める」だ。長年、地域に貢献し、愛着のある店を閉めるというのは寂しい。事業承継を本気で考えてみてはどうだろうか。
後継者不在による23年度の「後継者難」倒産は過去最多と言われている。その理由の8割は経営者の「死亡」「体調不良」が占めている。事業承継の準備は不測の事態への備えでもある。将来の承継を見据えて、着実に売れる商品を選び、利益を上げていく地道な努力と準備が必要だ。
中小零細企業の多くは、子息などの親族が後継者の主流だが、今では「社外の第三者」など多様化している。役所に相談し、実際に地域の若者を募集して事業を引き継ぐケースもある。「廃業」という一つの道ではなく、自らが育て上げた店をやる気のある若者に事業承継していくことも一つの選択肢だ。