この春夏商戦は昨年よりも比較的商品の動きが良かった。これを秋冬商戦にもつなげていきたい。コロナの感染拡大や仕入れコストの上昇など、さまざまな要因が商売の壁になっている。ウィズ・コロナの秋冬商戦にどう勝ち残っていくか。旅行需要の復活も期待される。専門店と卸が緻密に連携し、早め、早めの取り組みが重要になってくる。

早期の取り組み奏功

春夏商戦はGW(ゴールデンウィーク)前後から商品が動き出した。例年にはない6月後半の連続した猛暑日の影響で夏物商品の動きが一層活発化した。異例の早さで梅雨明けが宣言され、コロナ感染が下降傾向にあったこともあり、大手小売りは通常のセール時期を延期。プロパー商品の売り上げを伸ばした。

 横山町ではいち早く春夏商品に取り組んだ問屋が比較的好調に推移した。アクロス(横山町6の15)は1月には春物に切り替え、順次夏物にシフトした。「GW前後から夏物が好調に動き出した」という。また、大手の丸太屋(東日本橋2の26の8)と宮入(横山町6の18)は1月に春夏物の先行予約会を開いて専門店へのアプローチを強化した。「お出かけ需要も活発で、ブラウスやジャケットなどの羽織物が好調」(丸太屋)や「売れ筋商品をいち早くつかむことができ、お取引先様に提案することができた」(宮入)としている。

丸太屋の展示会

宮入の展示会(左:1F 、右:2F)

 ポイントは気温の変化や消費者の動向をいかにつかんで、動きの良い商品を集めることができるかだ。原材料費や輸送コストの高騰、円安などによる価格変動で、各社とも「メーカーが商品の生産を縮小している」と口を揃える。メーカーや取引先専門店と連携し、その中で商品を安定して供給できるかが分かれ目になっている。

 一方、専門店にとっても早めの取り組みが求められている。横山町を訪れて仕入れる東京の専門店は「実需期前に商品を仕入れて売り切ることが大事」と話す。売れ筋商品の追加が難しい状況の中で在庫を残さず、新鮮な店頭を維持していくことが必要だ。秋冬商戦にも同様なことがいえるだろう。

9月には冬物投入も

 メーカーから商品を仕入れにくい状況は続く。早めの動きが必要だろう。

 丸太屋と宮入はすでに7月中に秋冬物の展示会を開き、ともに「先行して発注いただいている」と手応えを感じている。アクロスは8月1日から秋物商品を店頭に投入する。都繊維ファッションシティ(横山町10の14)も8月1日からインポート物を中心に「早いサイクルで新商品を投入していく」としている。問屋各社の多くはお盆明けから本格化するが、例年よりも早めの品揃えに取り組む傾向が強くなっている。この夏は暑さが長引くとの予想もあるが、夏物の実売と並行して秋冬物の商品の仕入れ計画を立てていく必要があるだろう。

 また、「お取引先様の希望で、9月には冬物をスタートする」(ザ・センバ3、横山町8の15)や「気温が少しでも下がれば裏起毛などのパンツが動き出す」(丸田産業東京支店、横山町2の3)などの現状から、9月には冬物のコート類やダウンジャケット、パンツなどが店頭に並ぶ。専門店は夏物を引っ張り過ぎず、冬物への過渡期としての秋物を提案。スムーズに冬物へと移行することが求められる。

価格上昇は必至

 この秋冬物から価格上昇は必至の状況だ。原材料費や物流コストの高騰、中国メーカーに頼る部材の不足、加えて円安の進行が生産コストを押し上げている。メーカー各社は問屋各社に値上げを通告しており、「今後、期中での値上げもあり得る」としている。

 問屋各社は「ある程度の値上げはやむなし」と、状況に合わせて取引先の理解を求めていくが、その中でより上質な商品をできるだけ買いやすい価格で提供していくことに努力する。内藤商事リラレーヌ(東日本橋3の13の1)は「取引先様から良い商品が欲しいという声が多くなってきた」とし、素材やデザインなどにこだわって、ある程度単価の取れる商品も提案していく。日本製にこだわるニューいちやま(横山町8の14)は「値上げ幅が大きく、取引先様が対応できない価格になっている」と、上質な素材と縫製でありながらメーカーに残るキャリー品をリーズナブルな価格で提供していく。

 一方、中国製や韓国製の廉価な商品は円安の影響が大きい。定番品であっても昨年よりも30%程度価格が上昇しているケースもある。トーヨー(横山町6の11)は「商品を追加する際に価格が上昇していくことも考えられる」としている。

 資源の高騰や円安に伴う物価の上昇は今後も続いていくだろう。コロナ禍で苦しい状況に追い込まれ、今度は経済情勢によってまた新しい壁に突き当たった。顧客が納得する価格と品質の商品をどのように選んでいくか。卸も専門店も難しい選択が迫られる時代になってしまった。