4月は気温の上昇もあり、大手小売りでは夏物が順調に滑り出したようだ。東京都内ではインバウンド(訪日外国人)が復活したことも後押しした。多くの専門店にその実感は薄いのが実情だが、諦めるのはまだ早い。今年も暑い夏がやってくる。夏商戦はこれからが本番だ。

昨年は2000年間で最も暑い夏

 ドイツの大学が英科学誌ネイチャーに発表したところによると、熱帯域を除く北半球の昨年の6〜8月の気温は、産業革命以前とほぼ同じとされる1850〜1900年と比較して2・07℃上昇。「木の年輪などから推測した西暦1〜2000年で最も高い気温を記録した」としている。つまり昨年は、2000年間で最も暑い夏を過ごしたことになる。確かに昨年は例年よりも厳しい暑さを感じた。

 今年はどうか。気象庁が発表した6〜8月の3カ月予報によれば、降水量は「ほぼ平年並み」だが、平均気温は「全国的に高い見込み」だ。5月にはすでに真夏日を記録した地域もあり、7月並みの気温となった。今年も暑い夏が予想される。

 一方、梅雨入りは平年並みとなりそうだ。日本気象協会は北海道を除き、沖縄・奄美地方は5月中旬から下旬にかけて、東日本は6月上旬、北日本は6月中旬と予想している。夏物の販売は梅雨前のスタートダッシュが必要だ。

盛夏物は日傘や帽子など雑貨に注目

 繊研新聞によると、この4月のファッション小売りの商況は、「ユニクロが18・9%増(EC含む)」「しまむらが6・3%増」「アダストリアが4・1%増」といずれも前月から一転して売上げを伸ばした。大都市圏の百貨店ではメンズ、レディス共に「夏物衣料が比較的好調に推移した」としている。いずれも軽い素材のスカートやパンツ、薄手のシャツのほか、カーディガンやブラウスジャケットなどの羽織物の動きが良かったようだ。

 一方で、「服飾雑貨も2ケタ増だった」とする百貨店もあった。「日傘、帽子が2ケタ増」(高島屋)、「日傘が20%増、サングラスが9%増」(大丸松坂屋百貨店)など、盛夏アイテムの動きも活発だった。

 これら百貨店が先行したが、地域の専門店にとって日傘や帽子、サングラスなどはこれからの時期に注目するべきアイテムだ。盛夏に向けた衣料はもちろんだが、そこに日傘や帽子などの雑貨を加えていくのもいい。

 特に日傘は、昨年は5月から動き始めたが、今年は雨の日が多く、6月に一気に動きそうな気配だ。「昨年は日傘が好調で、今年はレースなどのバリエーションを広げた」(丹波屋、横山町7の17)や「日傘はここ数年伸び続けている。今年も品薄が予想される」(宮入第一支店、横山町奉仕会館1階)といった声が聞かれる。また、男性が日傘を使うケースも増えており、男女を問わず店頭で扱うことができる。男性用日傘は「昨年は売り切れの状態になった」(宮入第一支店)や「確実に日傘を使用する男性は増えている。上質な男性用日傘が飛躍的に伸びた」(小宮商店、東日本橋3の9の7)という。

 また、「アウトドアだけではなく、タウンでのオシャレを楽しむアイテムも揃えている」(マンウ、横山町5の7)と、涼感素材などの帽子にも注目だ。衣料とのコーディネートを提案するなど少し目先を変えて、店頭にお客を呼び込みたい。

祭りや花火大会向け商品は早めに

 昨年は各地の祭りや花火大会が復活し、実に4年ぶりの開催に多くの人が熱狂した。今年もこれらは通常開催される予定で、多くの人で賑わうことが予想される。

 昨年は祭りや花火大会が盛り上がった一方で、横山町の問屋では祭り用品などの商品が品薄になった。コロナ禍でメーカーや問屋の廃業が相次いだことが影響した。

 祭り衣装や和小物の専門卸、丸三繊商(横山町5の4)は、昨年夏の約3カ月間、店頭を閉め切り、商品の出荷に専念せざるを得ない状況になった。地下足袋など店頭で販売できる商品が底を付き、入荷を待ってすぐに出荷という状態が続いた。

 「今年も同じような状況になるのではないか」と危惧するのは村上信夫社長。半纏や鯉口シャツなどは地域の小売店が祭りに参加するチームを取りまとめて名前入りの揃いを発注するケースもある。浴衣やバッグなどは衣料専門店からの問い合わせが多い。すでに受注しているが、「入荷時期の確定が難しく、早めに注文していただかないと、開催日に間に合わないケースも出てくる」と話す。

 このほか、バッグのボルサ角萬(奉仕会館1階)は和装にもマッチするポシェットや携帯ケースなどが好調で、専門店からの問い合わせも多い。

 祭りやイベントは衣料専門店にとってもチャンスの一つだろう。地元のイベントに合わせて、顧客ニーズを掘り起こし、独自の商品仕入れで、是非とも売上げにつなげていきたいものだ。