新型コロナの第5波は、私たちがこれまで経験したことのない規模で新規感染者を増やした。しかし、毎日2万人を超えた感染者は一気に減少傾向に向かっている。政府の制限緩和によって消費者のマインドは確実に変わる。これからは秋冬物の実需期。販売チャンスを逃さない品揃えと戦略が必要だ。

消費者が動き出す

 新型コロナの感染拡大がなかなか収まらず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されている地域はそれらが9月末まで延長された。しかし、全国で2万人以上の新規感染者が出た頃に比べて、感染者は減少傾向にあり、ワクチン接種が進行したこともあって、活発な経済活動に期待が高まるばかりだ。

 政府は既に宣言解除後の行動制限の緩和を検討している。昨年の緊急事態宣言解除後は、「GoTo トラベル」や「Go To イート」などのキャンペーンが始まり、卸や専門店にとっても少なからず効果があった。今回の解除後にどのような政策が打ち出されるかはわからないが、「昨年のような政策があれば消費者が動き出す。旅行などが活発になれば、商品は確実に動き出す」(問屋関係者)と期待する声は多い。行動制限が緩和されれば消費者のムードは変わる。今度こそ、消費者が動き出す。前向きになった消費者にどんな商品を提案するか、今から準備が必要だ。

店頭が変わった

 緊急事態宣言と、第5波と言われる感染拡大で「秋物が振るわない。注文は昨年よりも少ない」とする問屋がある一方で、「この9月の売り上げは比較的好調。初旬の気温低下で良い方向に向かった」という問屋もある。

 9月初旬には気温が一気に低下した時期があった。早い専門店はそのタイミングに合わせて初秋ものを仕入れた。店頭を変えたことで、「9月で秋物が動き始めた。そこでお客様の目が秋物に向いた」とする店もあった。

 不調と言われる衣料だが、商品は確実に動いている。問屋各社は10月、11月に向けて十分な商品を揃えた。この間、横山町に来街できない顧客と電話やLINEを通じてコミュニケーションを深めてきた。商品情報の提供だけではなく、実際の受注も行ってきた。コロナ禍で講じた苦肉の策だが、これによって取引先が何を望んでいるかをコロナ以前よりも深く理解することができたのは大きい。積極的に問屋に問いかけた専門店は店頭での落ち込みを最小限に止めることができた。秋冬物はこれからが実需期だ。問屋の情報をどう生かしていくか。専門店の実力が試されていくだろう。