止まらない物価高に、電気料金の値上げが消費生活を圧迫し、この春夏商戦では「衣料まで手が届かない」という声が聞かれた。苦戦した卸や小売店も多い。だからこそ秋冬商戦に対する期待は大きい。横山町奉仕会加盟の卸各社はすでに秋冬物の準備を着実に進めている。今こそ、卸と小売店が緻密に連携し、秋冬商戦に万全の備えをしていきたい。
夏物から秋物へ、スムーズに移行
今年は6月から真夏日が続出するなど、暑い日が続いたが、その割に夏物商戦は動きが鈍かった。6月の商況は一部百貨店では好調に推移したが、大手衣料専門店などは前年を下回ったところもあった。「旅行需要は回復したが、衣料の購入にはつながらなかった」というのが大方の見方だ。多くの小売店にとっては「秋冬物で取り戻したい」という思いが強いのではないだろうか。
問屋各社は8月に入ると初秋物から晩秋物、9月に入ると冬物へと品揃えを移行していく。残暑が厳しいことが予想され、薄手のカットソーや羽織物から徐々にベストやカーディガン、ジャケット、コートの品揃えを厚くしていく。傾向としては「年々、お取引先の秋物、冬物の相談が早まっている」という。できるだけロスのない仕入れをしたいという小売店が多くなっているのは事実だろう。気候を見ながら夏物から初秋物、秋物へとスムーズに店頭の品揃えを工夫していく必要がある。
問屋と仕入れ計画を相談
丸太屋(東日本橋2の26の8)と宮入(横山町6の18)は昨年に引き続き、7月に秋冬物展示会を開催した。特に丸太屋のパンツ売り場は昨年よりも1週間も開催を早めた。共に取引先が要望する商品アイテムを着実に捉えることはもちろん、メーカーに対して必要な数量を確保するのが目的だ。小売店の発注に応えて商品を供給するのが問屋の役割だが、生産を絞り込んでいるメーカーに対して早め、早めに仕入れ量を示すことで確実に商品を確保する。各社とも改めて、問屋としての機能を強化している。
だからこそ、仕入れる小売店は問屋に足を運び、自店が必要とする商品とその数量を担当者に伝える必要がある。実売期に訪れても、自店が仕入れたい商品が欠品しているかもしれない。事前に仕入れ計画を伝えれば、実売期でなくても今年の売れ筋、各小売店が望んでいる商品を知ることができる。問屋はその小売店に必要な数量の確保を最大限に努力する。チャンスロスほど悔しいものはない。
実績踏まえ、新商品を開発
小売店の仕入れは定番が先行するが、問屋各社は販売実績のある商品をベースに、新しいデザインやアイテムの開発にも積極的だ。
丸太屋は冬物ジャケットでボアや中綿、ボアとダウンを組み合わせた新作を発表した。「昨年、良く動いた組み合わせのデザイン」と、ベストやジャケットなどを提案している。
宮入は1階のカットソーやチュニックで、「上質な素材で、肌触りの良い商品を新たに提案する」と、再生繊維のセルロースを使ったトッパーやスウェードのチュニックなどを打ち出した。
トーヨー(横山町6の11)は今年の冬物からウールやダウンのジャケットやコートを販売する。新たな試みの商品で、「質の高い商品をリーズナブルな価格で提供したい」としている。また、小物雑貨を強化して、小売店での品揃えを広げるサポートをする。