コロナ禍で痛感したお客様との「絆」。横山町奉仕会は個店の皆様と歩んでいく
にしざわ・まさる
1993 年獨協大学卒業後、米イリノイ州ドミニカン大学に留学してMBA を取得。96 年北京中央民族大学に語学留学。97 年ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社し店長を務める。99年マルタ布帛株式会社に入社、子供服の企画営業を担当。2001 年、家業である株式会社トーヨーに入社し、06年に社長就任。横山町奉仕会では07年に事業部委員兼企画室委員を皮切りに、宣伝部長などの要職を経て、19年より副会長に就いていた。1971 年生まれ。50歳。柔道初段。スキー検定1級。
ベテランと若い力を融合していきたい
—-14年ぶりの新会長誕生です。
宮入正英前会長は在任中、リーマンショックや東日本大震災など、厳しい状況に襲われながらも横山町奉仕会(以下、奉仕会)の発展と活動に大きく貢献してくださいました。
また、会長として問屋街の活性化や問屋街の街づくりにも尽力してくださいました。まずはそのお礼を述べたいと思います。
引き継ぐ者として宮入前会長と同じようにはできませんが、精一杯、奉仕会の発展に力を尽くしていきたいと考えています。
—-役員人事では若い後継者も加わった。
村上信夫氏(丸三繊商社長)が副会長に就いたほか、各部の副部長に若い世代が新たに加わっています。これまでも各部を引っ張っていただいているベテランと若手のバランスの良い役員構成になったと思っています。
コロナ禍という難しい時代、私の役割の一つは、若い力を生かし、ベテランの方々の意見を伺いながら様々な施策の方向性を調整していくことだと思っています。
—-プレッシャーもあるでしょう。
もちろんです。創立以来88年、先人たちは横山町を日本一の問屋街に育ててくださいました。私たちはそれを受け継ぎ、さらに次世代に受け渡していかなければなりません。
奉仕会の活動に加わっていただいている若手は、この街に根ざし、この街で商売をしていく覚悟を持った人たちです。私も含めて同じ志を持っています。
難しい時代にあって、何が求められるのか。若手とベテランの力を合わせて立ち向かっていきたい。
専門店様との信頼関係をさらに強く
—-昨年、今年とコロナの影響を受けた。
第1回目の緊急事態宣言が発出された昨年の4月、5月は、問屋街から仕入れに訪れる専門店様の姿が消えました。各商社も専門店の皆様も本当に辛い時期を過ごしたと思います。
9月、10月は一時的に活気を取り戻しましたが、今年は年初から感染が拡大し、東京都では不要不急の外出自粛が求められました。
私たち問屋もそうですが、専門店の皆様のご商売は本当に厳しい状況だったと察します。奉仕会加盟各社は仕入れに来られない取引先様を何とか支援したいと、電話やファクス、インターネットを通じて商品をお届けしてきました。お客様と密に連絡を取ることがいかに大切かを学んだと思います。
—-厳しい中でもお客様に助けられた。
本当にそうです。店頭にいらしていただいたお得意様はもちろんですが、コロナ禍の影響で東京に来ることのできない東北など地方のお客様が電話やLINEでご注文をくださいました。共に苦しい状況は同じですが、またお客様との絆が深まったと実感しています。
—-コロナ禍を教訓にしていく。
昨年から今年にかけてのコロナ禍で私たちは多くのことを学びました。
実感しているのは、苦しい時代だからこそこれまで培ってきたお客様、お取引先様との信頼関係がとても大事だということです。仕入れていただく専門店様と電話やファクス、ネット、SNSなどで商談ができたのも信頼関係があってのことです。加盟各社がいかにお得意先様と密なコミュニケーションを取っていたかを改めて知りました。
それはメーカーも同様です。信頼関係があるからこそ、商品情報を送ってくれたり、リモートで商談できたりしました。インターネットなどのインフラ整備はとても大事です。でもそれはお客様との信頼関係があってこそ生きるものです。コロナ禍ではそのことを強く感じました。
—-これから商売は良くなっていく。
ここにきて問屋街を訪れる専門店様が増えてきました。東北や山梨などの地方のお店にもいらしていただいています。
今、ワクチン接種がどんどん進んでいます。高齢者の2回目接種もまもなく終了していくでしょう。そこから若い世代へと拡大していきます。ワクチン接種への期待は大きい。
ワクチン接種が終了すれば高齢層は動き出します。旅行や買い物に出かける機会も増えていく。動き出せば衣料などへの消費も次第に活発になっていくでしょう。
初秋から冬物商戦は昨年とは違う様相になっていると思います。今はその準備期間と考えるべきです。秋冬商戦に向けて商品をどう手当てするか。私たち問屋と専門店様が共に考えていくことが大事だと思っています。
奉仕会加盟は来街する皆様の「信頼」の証し
—-横山町の問屋の優位性はどこに。
横山町の問屋は、一軒一軒の規模は大きくはない。それぞれが専門性を持ち、商品の奥行きを追求しています。
衣料だけではなく、身に着ける様々なアイテムを仕入れることができます。そして店頭の商品は売れ筋ばかりです。売れ筋の商品しか置いていない。それが現物商売の最も優れているところです。そしてそれが専門店の皆様の大きな力になっていると考えています。
—-これから取り組む課題とは。
具体的な施策は今後になりますが、やはり時代に合わせて変えなければならないところは変えていく。
例えば「奉仕券」です。長くご愛顧いただいていますが、この奉仕券に加えて、新たなサービスが考えられないかと思っています。
また、加盟商社の拡大にも取り組んでいきたい。この街で新たにビジネスを始める会社や、いまだに加盟していない店舗を勧誘していきたいと考えています。
その一方で、時代に合わせたインフラの整備も必要になってきます。インターネットやSNSを活用した取引の拡充、yhカードの利用者拡大などキャッシュレス決済の整備、商品管理を簡略化するICタグの導入など、1社ではできない課題に対して加盟各社が協力して、一つの力となって取り組んでいきたいと考えています。
—-改めて奉仕会の役割とは。
奉仕会に加盟していることは「信頼できる問屋である」ことの証明です。
まずは仕入れていただく専門店様に安心して仕入れていただける環境を整えていくことが私たちの使命です。横山町は330年の歴史を持つ商業街です。商売をする店は時代に合わせて、人に合わせて柔軟に扱う商品を変え、商売のやり方を進化させてきました。
それは今も変わりません。消費者は今、何を求めているのか。そのためにどんな商品が必要なのか。専門店の皆様に今の空気感を伝え、売れる商品を仕入れていただく。それが問屋の生きる道であり、奉仕会がそのバックアップをしていく。奉仕会の果たす役割は、今後も大きくなっていくと考えています。
また、奉仕会が存在することは異常な価格競争を抑制する力にもなっています。価格競争は商社にとっても、専門店にとってもデメリットです。
品質に応じた適正な価格を維持し、商社と専門店がウィンウィンの関係を築いていくことが重要だと思っています。
—-今後については。
今、私たちが見据えなければならないのはコロナ後です。新常態=ニューノーマルと言われますが、ワクチン接種が進み、不安が解消していけばかなりの部分で日常が戻ってくるでしょう。
そうなれば、海外から仕入れに訪れるお客様も増えてきます。地域内でのフリーWi Fiの拡充や奉仕会ホームページの多言語化にも取り組んでいきたい。
また、23年には奉仕会創立90周年を迎えます。記念イベントや特別券の発行、抽選の当選品の充実など、専門店の皆様に喜んでいただける企画を考えていきたいと思っています。
—-ありがとうございました。