西沢郷横山町奉仕会会長(トーヨー社長)はこの8月3〜5日、韓国・ソウル東大門の「新平和市場」を訪ね、同市場を運営する新平和商人会のジョン・ジョン・ヒ管理会長とオ・ナム・シク会長を表敬訪問した。両国のファッション事情や今後の市場動向についての意見交換を行い、横山町奉仕会と同市場が将来に向けて友好関係を築いていくことで一致した。
横山町奉仕会会長
西沢 郷
韓国最大級の市場
ソウルの東大門は南大門と並ぶ繁華街で、ファッション衣料を仕入れる市場が集積しています。広蔵市場、東大門市場、新平和市場、東平和市場、興仁市場、第一平和市場、光煕市場があり、その中でも新平和市場は最大級の市場で、 コロナ感染拡大以前は日本からも多くの企業が仕入れに訪れていました。ジョン・ジョン・ヒ管理会長は「市場として販促活動はする必要がない。認知度が高く、国内、海外も含めて多くの企業が新平和市場を目指してくる」と胸を張ります。
新平和市場は4階建てで、1096店舗が入居しています。ほとんどが20〜30㎡で、1〜3人で仕入れに訪れる人を迎えています。
1階に出店している店舗では小売りが認められていますが、2〜4階は卸専門のルールがあり、特に4階は海外向けで主に日本向けの商品を扱っています。
韓国国内向けの商品を扱う店舗は前日の夜から営業が始まり、昼前には終了します。全体の約4分の1が海外向けの店舗で、明け方の早い時間にオープンして午後2時くらいで終了してしまいます。特にミセスなど総合衣料に強いのが特徴です。私は長くこの市場で仕入れをしてきましたが、低価格でも品質がしっかりしており、安心して日本の専門店様にご紹介できる商品を仕入れることができます。
コロナ禍で変化
それがコロナ禍で大きく変わりました。この市場でもコロナ禍によって営業の形態が大きく変化したといいます。新平和商人会のオ・ナム・シク会長によれば、「コロナ禍で仕入れに来るお客さんが激減した。オンラインかSNSで完結するようになった」と、店舗を開けない店が増えたそうです。本来は罰金があるのですが、「それもコロナ禍で仕方がない」と話していました。
特に日本など海外の企業は入国に厳しい制限が敷かれて、これまでの仕入れ形態とは全く違う方法で商品を手当てしてきました。私たちは現地で商品を選ぶことができませんでした。オ・ナム・シク会長がおっしゃるように、SNSを駆使して情報交換し、商品を確認してきました。それが可能だったのは、これまで市場のお店と信頼関係を築いてきたからだと思っています。その言葉を聞いてジョン・ジョン・ヒ管理会長は「西沢会長のおしっしゃる通りです」と大きくうなずいてくれました。
新しい時代へ
コロナ禍では中国の工場がロックダウンし、韓国の衣料メーカーがテキスタイルを十分に仕入れることができず、製品が不足することもありました。物流の滞り、またロシアのウクライナ侵攻によって、原材料費やエネルギーコストの上昇が今後も懸念されています。衣料品流通を取り巻く環境は決して楽観できません。
これらの認識を共有し、今後の厳しい時代に向かって新しい友好関係を築くことが、韓国の市場にとっても、日本の衣料専門店にとっても、とても重要なことだと考えています。ジョン・ジョン・ヒ管理会長は「日本の横山町馬喰町問屋街は私たちにとっても大事な存在。互いの人的交流を促進し、意見交換の場を増やしていきたい」とおっしゃいました。新たな関係構築に向けて意見が一致しました。
これからは、これまでの3年間とは全く違う状況になってくるでしょう。日韓の間でビザなし渡航が可能になります。難しかった日韓関係も改善の兆しが見え始めました。そうした新しい局面に、商品を供給する新平和市場と日本での流通の要、横山町奉仕会が互いの関係を深めていくことには大きな意味があると考えています。