〜感染拡大に留意し、積極的に夏物販売を〜

 政府の新型コロナウイルス感染拡大の緊急事態宣言が発出されて約2カ月。5月14日に特定警戒都道府県を除く39県、21日に大阪、兵庫、京都、そして26日、残る北海道、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏でも緊急事態宣言が解除された。政府の諮問機関である新型コロナ感染症対策専門家会議は、「収束に向かってはいるがまだ警戒は必要」としているが、多くの地域で店舗の営業が始まり、少しずつだが経済活動が動き出してきた。消えた春商戦を挽回する夏商戦が始まろうとしている。

厳しかった2カ月

 新型コロナウイルスの感染拡大は、ファッション衣料にとって大きな打撃となった。特に緊急事態宣言によって店舗が休業を余儀なくされ、外出自粛によって消費はこれまで体験したことのないほどに落ち込んだ。大手アパレルのレナウン(本社東京)が経営破綻して民事再生手続きに入り、中小アパレルや専門店などの廃業も相次いだ。

 厳しい状況は横山町問屋街へも襲った。特に緊急事態宣言の発出以降、4月は「お客様の専門店がほとんど店を訪れない」「売り上げは通常の8〜9割の減少」と、各商社の嘆く声が聞かれた。

 一方、来街する専門店にとっても状況は同じだ。来店客数の減少はもとより、臨時休業を余儀なくされ、「売り上げはゼロ。スタッフの雇用も難しい」「売れるのはマスクとその材料となる晒しやガーゼ手拭い」など、経営そのものが逼迫している専門店も多い。出口の見えない状況に耐えるしかなかった。

好転の兆し

 状況が少し好転の兆しを見せ始めたのが5月半ば以降だ。ここにきて「お客様が以前の5割ほどまで戻った」や「電話やファクス、メールなどでの問い合わせが増えてきた」とする商社も出始めた。39県での緊急事態宣言解除が発表された直後には、横山町の立体駐車場「わいわいパーク」では久々の「満車」となった。「仕入れに訪れるのは東京の専門店」という。県を超えての移動自粛が要請されており、地方専門店の来街はまだまだ。東京での感染を恐れてか、商社を訪れて仕入れていく専門店はまだまだ少ない。

 しかし、夏物商戦は確実に動き始めている。専門店の営業状況などを見て夏物の仕入れ調整をしてきた商社もあったが、直近の2週間の状況から初夏物商品にアクセルを踏み始めた。

お客様の動きを注視

 横山町奉仕会の西沢郷宣伝部長(トーヨー社長)は「自粛後には必ず反動がある。そこを見極めて準備することが大事」と話す。営業を再開した百貨店に多くの人が訪れる様子が報道されている。消費者は我慢を強いられてきたが周囲の状況を見ながら少しずつ動き出す気配を見せている。

 専門店にとっては地域のお客様の動きを注視する必要があるだろう。人の流れが多くなり、外出することにためらいがなくなったときに消費は動き出す。そのときに店頭にタイムリーな商品を見せて購買意欲を掻き立てていく工夫が必要だ。

 「すぐに仕入れて、店頭に並べることができる。それが横山町の問屋が持つ大きなメリット」(西沢部長)。来街して商品を選ぶことができればいいが、それができなくても電話やファクス、メールやネットでの卸など、横山町は多様な機能を備える。

 全都道府県で緊急事態宣言が解除され、消費者が次第に動き始める。第二波、第三波への危惧もあるが、専門店は当面、「三密」を避けるなどの感染予防対策をしながら営業しなければならないが、ここを一つの契機として消費を喚起する商品と店づくりに取り組んでいく必要がある。